茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術

精神性の伝承と個性の発露

約450年前、樂家初代長次郎によって生み出された樂茶碗。以来、代を継ぐ一人の子だけに当代の総てを伝えるという一子相伝の芸術として、今日まで伝えられています。初代長次郎から十五代樂吉左衞門までの歩みを振り返る展覧会が、東京国立近代美術館で開催中です。

  • (手前)《焼貫黒樂茶碗 銘 砕動風鬼》十五代 吉左衞門 1990年 樂美術館蔵
  • (手前)重要文化財《黒樂茶碗 銘 青山》三代 道入 17世紀 樂美術館蔵
  • (手前)《焼貫黒樂茶碗 銘 涔雲は風を涵して谷間を巡る 悠々雲は濃藍の洸気を集めて浮上し》十五代 吉左衞門 2003年 樂美術館蔵

展覧会は樂焼の創始者・長次郎の作品から。長次郎の父は渡来人で、明から三彩陶の技術を日本に伝えた人。樂焼の釉技は、これが基本になっています。

時代は茶の湯が大きく発展した戦国時代。唐物や高麗茶碗を重んじていた従来の価値観を否定した千利休は、侘茶を提唱。樂茶碗は侘茶の精神を具現化したものといえます。

轆轤(ろくろ)や型を用いず手捏ね(手捻り)で形をつくる樂焼。一般的な焼きもののイメージとは異なる個性的なスタイルは、現在でも守られています。

初代 長次郎


展覧会では樂歴代すべての作品が紹介されています。

十五代を数える樂家ですが、それぞれ当代は最新鋭の作陶家(当たり前ですが)。技術と精神性を伝承しつつ、作品からは各々の個性も垣間見えます。

歴代の中でも重要な人物といえるのが、「ノンコウ」の愛称で知られる三代道入。親交が深かった本阿弥光悦から大きな影響を受けましたが、単なる模倣に留まらず、斬新でモダンな茶碗を生み出し、樂焼の新たな地平を切り開きました。

二代~篤人(次期十六代)までの作品


会場の最後では、大きなスペースを取って十五代樂吉左衞門の作品を紹介。暗い展示室に独立ケースが林立するさまは、東京国立博物館の法隆寺宝物館のような神々しさです。

当代は1981年に十五代樂吉左衞門を襲名。前衛的な作風は国内外で高く評価されており、作陶家というより現代彫刻家といった方が近いかもしれません。方向によって違う表情を見せてくれる作品も多いので、ぐるりと回ってお楽しみください。

「十五代 吉左衞門の世界」


茶の湯の展覧会が続く2017年。本展は京都からの巡回展で、東京が最終会場となります。お見逃しなく。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年3月16日 ]

愛蔵版 茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術愛蔵版 茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術

樂 吉左衞門 (著), 松原 龍一 (著)

講談社
¥ 4,320

料金一般当日:1,400円
 → チケットのお求めはお出かけ前にicon


樂家一子相伝の芸術 に関するツイート



 

ミュージアムの詳細

展覧会の詳細

会期

2017年3月14日(火)~5月21日(日)