『今様』 ― 昔と今をつなぐ

伝統の継承と、現代の表現

当世風や現代的スタイルを意味する「今様(いまよう)」。現代美術展のタイトルに古い言葉を用いたのは、伝統的な技法や材料が作品の中に息づいているからです。2016年10月~2017年1月にハワイで開催されて日本に巡回してきた国際展が、渋谷区立松濤美術館で開催中です。

  • 木村了子《男子楽園図屏風 East & West》2011年 作家蔵
  • (左から)歌川国芳《武者尽はんじもの》江戸時代 太田記念美術館蔵 / 染谷聡《おすましる代》2009年 個人蔵
  • 染谷聡《今は昔は今/Displayism Deer》2016年 作家蔵
  • (中央)棚田康司《木の花は八角と星形の台に立つ》2015年 作家蔵 / (周囲)棚田康司《12の現れた少女たち》2016年 作家蔵
  • 山本太郎《隅田川 桜川》2010年 個人蔵
  • (左上から)木村了子《九谷の王子さま−赤絵孔雀王子》2013年 作家蔵 / 木村了子《九谷の王子さま−紫牡丹に親指王子》2013年 作家蔵
  • (左から)石井亨《競争社会》2014年 作家蔵 / 石井亨《そば屋》2013年 作家蔵
  • 満田晴穂《無為》2016年 作家蔵
  • (左から)木村了子さん、展覧会企画・監修のジョン・ショスタックさん(ハワイ大学マノア校日本美術史准教授)、山本太郎さん

2つの展示室で、3名ずつが紹介されている本展。まずは第一会場からご紹介しましょう。

染谷聡(1983-)さんは漆芸作家。技法はまさに伝統的ですが、作品からはポップなテイストが漂います。モチーフの鹿は日本美術に良く見られる「神鹿」ではなく、スポーツハンティングの獲物としての鹿。引き出し状の鹿の口に弾丸が入っていたりします。

棚田康司(1968-)さんの木彫は一木(いちぼく)造り。一木造りは、奈良時代末~平安時代初期の仏像のほか、近世では円空や木喰の仏像もこの技法で作られました。作品は同じ方向を向いており、目線の先には棚田さんが敬意を払う円空仏が展示されています。

カタカナ表記の「ニッポン画」を描く山本太郎(1974-)さん。古典絵画を現代の視点で再構成します。能の演目を元にした《隅田川 桜川》は、いつもは左右が逆ですが、実は逆に置いても模様が繋がる作品。今回初めて学芸員に見抜かれたため、前期のみ特別に左右逆バージョンで展示されます。

染谷聡、棚田康司、山本太郎の作品


続いて上階の展示室。ここも3名です。

妖しいイケメンを描く木村了子(1971-)さん。美しい女性を描いた「美人画」に対し、女性である木村さんが描きたいのは情感たっぷりのイケメン。草食系と肉食系の対比が楽しい屏風、人魚姫ならぬ「少年人魚」、九谷焼もモチーフはイケメンです。お話も伺いましたが、予想通りとてもユニークな方でした。

石井亨(1981-)さんの作品は日本画のように見えますが、なんと手法は糸目友禅染。糊で輪郭線を描き、その間を染料で色付けする手間がかかる技法で、そもそもは着物のための技術です。鮮やかな企業戦士と、モノトーンの美人画です。

満田晴穂(1980-)さんは、自在置物。金属で可動する生き物を作る自在は、最近は明治工芸の展覧会で良く紹介されます。草木や花鳥を描いた江戸時代の版本と、リアリティ溢れる自在の虫を並べて展示。制作にあたっては、準備したモチーフを解体して調べるそうです。

木村了子、石井亨、満田晴穂の作品


美術鑑賞は理屈ではなく何よりも感覚が大切だと思いますが、背景を理解していると、より深く楽しめるのも事実。本展ではイメージの元になった古美術が、実物や写真パネルで紹介されているので、作品の成り立ちがすっと頭に入ります。

現代美術の展覧会は、実際の作家の声が聴けるのも楽しみのひとつです。本展でも出品作家によるアーティストトークが予定されています(4月16日、4月29日)。お時間が合うようなら、ぜひ。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年4月4日 ]

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展覧会の詳細

会期

2017年4月5日(水)~5月21日(日)