オルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき

相反する二面性

ヘブライ語で預言者を意味する「neviim」に由来するナビ派。平坦で装飾性の強い画面ながら、深い内面性も表しています。近年もナビ派の蒐集を進め、世界的なナビ派コレクションを有するオルセー美術館から、選りすぐりの81点を紹介する展覧会が、三菱一号館美術館で開催中です。

  • (左から)ケル=グザヴィエ・ルーセル《人生の季節》1892-95年 / ケル=グザヴィエ・ルーセル《テラス》1892年頃 / ピエール・ボナール《庭の女性たち 白い水玉模様の服を着た女性》1890-91年 / ピエール・ボナール《庭の女性たち 猫と座る女性》1890-91年 / ピエール・ボナール《庭の女性たち ショルダー・ケープを着た女性》1890-91年 / ピエール・ボナール《庭の女性たち 格子柄の服を着た女性》1890-91年
  • (左から)エミール・ベルナール《収穫》1888年 / エミール・ベルナール《ブルターニュの女性たち》1888年頃
  • モーリス・ドニ《ミューズたち》1893年
  • アリスティード・マイヨール《女性の横顔》1896年頃
  • (左から)ピエール・ボナール《親密さ》1891年 / ピエール・ボナール《ベッドでまどろむ女(ものうげな女)》1899年
  • (左から)フェリックス・ヴァロットン《髪を整える女性》1900年 / フェリックス・ヴァロットン《室内、戸棚を探る青い服の女性》1903年
  • (左から)エドゥアール・ヴュイヤール《公園 子守》1894年 / エドゥアール・ヴュイヤール《公園 会話》1894年 / エドゥアール・ヴュイヤール《公園 赤い日傘》1894年
  • (上)モーリス・ドニ《プシュケの物語 プシュケの誘拐》(第2ヴァージョン)1909年 / (左から)モーリス・ドニ《プシュケの物語 プシュケの好奇心》1907年 / モーリス・ドニ《プシュケの物語 プシュケの誘拐》1907年 / モーリス・ドニ《プシュケの物語 プシュケと出会うアモル》1907年
  • (左から)ポール・セリュジエ《ナビに扮したポール・ランソン》1890年 / ポール・ランソン《水浴》1906年頃

20世紀美術に繋がる重要な美術運動でありながら、注目度が高いとはいえなかったナビ派。ただ、近年は注目が集まりつつあり、ナビ派の一員であるヴァロットンの展覧会も、2014年に同じ三菱一号館美術館で開かれて注目を集めました。

展覧会はナビ派の精神的支柱、ゴーガンの作品から。印象派を離れたゴーガンは、浮世絵版画などの影響を受けてモチーフを単純化。ゴーガンの薫陶を受けたのがポール・セリュジエです。

第2章は「庭の女性たち」。ナビ派が描く女性は風景に溶け込み、自然と一体化したような作例も見受けられます。四季を思わせる4点の大作は、ピエール・ボナールによる「庭の女性たち」の連作。ボナールは「日本かぶれのナビ」と呼ばれ、本作も日本美術からの影響が顕著です。

第1章「ゴーガンの革命」、第2章「庭の女性たち」


ナビ派の作品では、室内の私的なシーンを覗き見たような、親密度が高い場面もしばしば描かれます。ボナールの《ベッドでまどろむ女(ものうげな女)》は、明らかに情事の後を想わせる作品。ヴァロットンによる室内の風景は、静けさの中に独特の緊張感が漂います。

4章では肖像画や自画像を紹介。ヴュイヤールの《八角形の自画像》は、2015年にオルセー美術館に新規収蔵されたばかり。細部の描写は避ける事で、画家の視線が強調されています。

第3章「親密さの詩情」、第4章「心のうちの言葉」


第5章は「子ども時代」。日常生活を描いた作品の中で、子どもは定番といえる主題のひとつ。ただナビ派の作品は、単に「愛らしい」だけではなく、幼少期の不安や危うさなど、影の部分にも目を向けている事も特徴的です。

さらにナビ派は、精神性や宗教など、目に見えない世界にも関心を寄せていました。「神殿」と称していたポール・ランソンのアトリエに集い、聖書や秘教の書物を研究しながら、創作に取り入れたナビ派の画家たち。象徴派の詩人や作家とも交流し、超自然的な世界を目指しました。

第5章「子ども時代」、第6章「裏側の世界」


展覧会タイトルに「ささやきとざわめき」とあるように、相反する二面性こそがナビ派の真実。新たな表現の追及は、後年のフォーヴや抽象美術にも繋がっていきました。活動期間は決して長くありませんが、美術史の面からももっと注目されていい一群です。

オルセー美術館が所蔵するナビ派作品だけを集めた展覧会は、今回が初めて。巡回はせずに、三菱一号館美術館だけでの開催です。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年2月3日 ]

かわいいナビ派かわいいナビ派

高橋 明也 (著), 杉山 菜穂子 (著)

東京美術
¥ 1,944

料金一般当日:1,700円
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ミュージアムの詳細

展覧会の詳細

会期

2017年2月4日(土)~5月21日(日)