ガレも愛した-清朝皇帝のガラス

‘透明で繊細’ではない、ガラスの美

「ガラス工芸」のイメージといえば、透明感や輝きなど、素材の特性を活かした作品。ところが中国・清朝の時代には、全く印象が異なるガラス工芸が数多く生まれました。その独特の美は、あのエミール・ガレをも虜にしたほど。清朝のガラス工芸を広く紹介する展覧会が、サントリー美術館で開催中です。

  • (左から)《白地紅被獅子文瓶》 / 《白地紅被楼閣瑞祥文蓋付壺》 ともに清時代 乾隆~嘉慶年間 18世紀 中国 サントリー美術館
  • (左奥から)《白色長頸瓶》雍正年製名 清時代 おそらく雍正年間(1723~35) 中国 東京国立博物館 / 《藍色鉢》清時代 おそらく雍正年間(1723~35) 中国 サントリー美術館
  • (左手前)《多色燭台》乾隆年製名 清時代 乾隆年間(1736~95) 中国 東京国立博物館
  • (手前)《白地二色被山水遊馬文蓋付壺》清時代 乾隆年間(1736~95) 中国 サントリー美術館
  • (左奥から)《藍色瓶》清時代 咸豊~光緒年間(1850~1900) 中国 サントリー美術館 / 《青緑色瓶》清時代 咸豊~光緒年間(1850~1900) 中国 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 / 《白地緑被花鳥文鉢》清時代 乾隆~嘉慶年間 18~19世紀前半 中国 サントリー美術館(辻清明コレクション)
  • (手前左から)《花器「蓮」》エミール・ガレ 1897年 フランス GALLERY YUI / 《花器「巻貝」》エミール・ガレ 1889年~1900年 フランス サントリー美術館
  • (左から)《昼顔形花器「蛾」》エミール・ガレ 1900年 フランス サントリー美術館 / 《花器「アイリス」》エミール・ガレ 1900年頃 フランス サントリー美術館(菊池コレクション)
  • (左手前)《花器「カトレア」》エミール・ガレ 1900年頃 フランス サントリー美術館 / (右奥)《白地二色被花鳥文瓶》清時代 乾隆~嘉慶年間 18世紀 中国 サントリー美術館
  • エピローグ「清朝ガラスの小宇宙」(展示風景)すべて町田市立博物館

中国でガラス製造が始まったのは、春秋時代末期から戦国時代(紀元前5~前3世紀)。貴石や玉の代用品として、儀式に関連する道具類などに使われました。

そのレベルが飛躍的に向上したのが、清王朝時代です。清は300年に及ぶ歴史の中で、第4代康熙帝・第5代雍正帝・第6代乾隆帝が最も繁栄した時代ですが(‘康雍乾(こうようけん)盛世’といいます)、ガラス工芸も同様。康熙帝が紫禁城内にガラス工房を開設、雍正帝は工房を移設し窯場を増加しています。

ただ、この時代のガラス器は、余り残っていません。クリズリングというガラスの劣化現象もひとつの原因で、本展でもこの時代の作品はわずかに3点。極めて貴重な作品です。

プロローグ「中国ガラスの始原」、第1章「皇帝のガラスの萌芽 ― 康熙帝・雍正帝の時代(1696-1735)」


第6代が乾隆帝(在位1735~1796)。この時代に、現在に残るガラス工芸の名品が数多くつくられました。

フランス人宣教師の助言もあり、さらに窯を増設。層を重ねる色被せガラス、貴石や大理石を思わせるマーブル・グラス、金の砂を含んだようなアベンチュリン・グラス、エナメル彩色など、多くの技法が採用されました。

清朝のガラスの大きな特徴が、重厚な彫琢(ちょうたく)と、独特の色彩です。中国では伝統的な造形感覚から、玉や水晶、象牙のような素材感を重視。絵柄の掘り抜きにも玉細工の研磨方法を用い、文様は切り立って表現されます。

会場の吹き抜けスペースは、撮影可能エリア。展示されている作品5点は、それぞれ清朝ガラスの特徴が良く現れています。お気に入りを撮影して、#清朝皇帝のガラス で投稿してください。

第2章「清王朝の栄華 ― 乾隆帝(1736-95)の偉業」


清朝のガラス工芸に魅せられたひとりが、エミール・ガレ(1846-1904)。アール・ヌーヴォーを代表するフランスの芸術家です。

ガレはその様式を確立するにあたり、様々な異国の美術を研究。1885年にはベルリンを訪問し、工芸美術館に所蔵されている清朝のガラスを調査しています。1889年のパリ万博で発表した作品については、自ら、玉からの影響について明言しています。

会場では、清朝の作品とガレの作品を比較した展示も。墨玉を模した黒色ガラスや、切り立ったような断面を持つ彫り出しなど、素材や技法は清朝ガラスに学びながら、モチーフは日本風だったりと、ガレならでは構成力が光ります。

会場最後も撮影可能コーナーです。ずらりと並ぶ小さな瓶は、嗅ぎたばこを入れる器「鼻煙壺」(びえんこ)。手のひらに収まるほどのサイズですが、清朝宮廷内のガラス工房では、驚きの細工が施された鼻煙壺が制作されました。無限に広がる宇宙を思わせるディスプレイもお楽しみください。

第3章「エミール・ガレと清朝のガラス」、エピローグ「清朝ガラスの小宇宙(ミクロコスモス)」


ちょっとかわった清朝ガラスの世界。細部を見ると、躍動感あふれる騎馬、遊びに興じる子どもなど、研ぎだされたモチーフもユニークです。じっくりご覧ください。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年4月25日 ]


料金一般当日:1,300円
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会期

2018年4月25日(水)~7月1日(日)