浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして・・・

めくるめく「浮世絵モダーン」の世界へ

浮世絵版画は江戸から明治にかけて、庶民が鑑賞できる数少ない美術でした。浮世絵が衰退しつつあった大正時代に、その復興を目指して伊東深水や川瀬巴水らが取り組んだ作品を紹介する展覧会が、町田市立国際版画美術館で開催中です。

  • (左から)《唐人お吉》橘小夢 1933年 個人蔵 / 《澤村田之助》橘小夢 1934年 個人蔵
  • 《髪梳ける女》橋口五葉 1920年 町田市立国際版画美術館蔵
  • (左から)《海女》高橋松亭(弘明) 1931年 渡邊木版美画舗蔵 / 《銭湯》高橋松亭(弘明) 1932年 個人蔵
  • 《旅みやげ第二集 金沢下本多町》川瀬巴水 1921年 渡邊木版美画舗蔵
  • (左から)《浅草観音堂大提灯》笠松紫浪 1934年 山梨県立美術館 / 《東京風景 増上寺の雪》土屋光逸 1933年 個人蔵
  • (左上)《大正震災木版画輯 第3輯 震後のニコライ堂(神田駿河台)》西澤笛畝 1924年 / (左下)《大正震災木版画輯 第9輯 大震災后之被服廠跡 安田邸(本所)》川崎小虎 1924年 / (右)《東京二十景 芝増上寺》川瀬巴水 1925年 いずれも町田市立国際版画美術館蔵
  • (左から)《梨園の華 十五世市村羽左衛門の植木屋吉五郎》 1921年 / 《梨園の華 十一世片桐仁左衛門の柿右衛門》 1921年 / 《梨園の華 初世澤村宗之助の梅川》 1921年 いずれも山村耕花(豊成)作 町田市立国際版画美術館蔵
  • (左から)《堀きり花菖蒲》高橋松亭(弘明)・伊藤総山〈合作〉 1909-16年 個人蔵 / 《亀井戸の藤》高橋松亭(弘明) 1909-16年 個人蔵
  • 《踊り 上海ニューカルトン所見》山村耕花 1924年 町田市立国際版画美術館蔵

展覧会タイトルの「浮世絵モダーン」は、本展独自の呼称。浮世絵版画の復興を目指して大正時代~昭和10年代まで制作・出版された伝統木版の事で、通常は「新版画」と呼ばれています。本展では、その「浮世絵モダーン」を5章で紹介します。

江戸後期以降の浮世絵は美人、役者、風景の三つがメイン。第1章「女性」は、最先端の風俗やファッションを描いた美人画といえます。

展覧会メインビジュアルの伊東深水《対鏡》は、黒と紅、そしてうなじの白と、三色のコントラストが映える作品。深水は『深い紅と黒髪からのぞく襟足の美しさを表現することを主眼とした』と語っています。

続く第2章「風景」には、どこか郷愁を誘う日本の原風景が並びます。川瀬巴水の《旅みやげ第二集 金沢下本多町》は、青々と茂った巨木の下に華奢な女性が描かれた作品。鮮やかな夏の色合いは、ひと際目を惹きます。

1章「女性」、2章「風景」


第3章「役者」は、歌舞伎や新派の作品が展示されています。新版画の役者絵といえば、山村耕花や名取春仙ら。版元の渡邊庄三郎の求めに応じて、大正期の芸術思潮を反映させた、近代の役者似顔絵を大成させました。

続く第4章では、西洋絵画の写実的表現を意識した、近代花鳥版画の新たなる可能性を示しています。高橋松亭の花鳥版画は、名所絵という設定や、遠近法の強調などが、歌川広重『名所江戸百景』の影響を見せています。ただ全体としては、西洋的な情景描写へ傾斜していることが確認できます。

最後の5章「自由なる創作」では、従来の三大画題を踏まえながらも、より個性を重視した作品が多く登場します。大正から昭和前期の社会や風俗など、その時代の様子を自由に表現しています。

3章「役者」、4章「花鳥」、5章「自由な創作」


開館30周年を迎えた町田市立国際版画美術館の節目の展覧会。出品総数は前期・後期合わせて約300点と大ボリューム、常時約230点の作品が並びます。展示替えについては、公式サイトの出品リストをご確認ください。

本展の後に、三重県のパラミタミュージアムに巡回します(12/6~2019年 1/14)。


[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年4月20日 ]

浮世絵鑑賞事典浮世絵鑑賞事典

高橋 克彦(著)

KADOKAWA
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展覧会の詳細

会期

2018年4月21日(土)~6月17日(日)