没後70年 北野恒富展

「画壇の悪魔派」から、大阪画壇のリーダーへ

美人画の名手として知られる、東京の鏑木清方、京都の上村松園。では大阪は? 北野恒富(1880-1947)は、関東ではあまり知られていないかもしれませんが、官展や院展で長く活躍し、明治から昭和まで大阪画壇を牽引した第一人者です。没後70年を記念した大回顧展が、千葉市美術館に巡回してきました。

  • (左から)北野恒富《花の夜》大正10年(1921)頃 関西大学図書館 / 北野恒富《淀君》大正9年(1920)頃 大阪新美術館建設準備室[前期展示] / 北野恒富《淀君》大正9年(1920)耕三寺博物館
  • (左から)北野恒富《燕子花》明治40年(1907)頃 / 北野恒富《六歌仙》明治40年(1907)頃
  • (左から)北野恒富《暖か》大正4年(1915)滋賀県立近代美術館 / 北野恒富《鏡の前》大正4年(1915)滋賀県立近代美術館 [いずれも前期展示]
  • 北野恒富《むすめ》大正14年(1925)島根県立石見美術館[前期展示]
  • (左から)北野恒富《ポスター:サクラビール》大正2年(1913)凸版印刷株式会社 印刷博物館 / 北野恒富《ポスター:朝のクラブ歯磨》大正2年(1913)公益財団法人吉田秀雄記念事業財団 アド・ミュージアム東京
  • (左手前)北野恒富《ポスター:菊正宗》大正11年(1922)頃 凸版印刷株式会社 印刷博物館 / (中上)北野恒富《ポスター:アリマサイダー》大正5年(1916)頃 鳥取県南部町祐生出会いの館 / (中下)北野恒富《ポスター:アリマツヾミサイダー》大正5~12年(1916~23)頃 鳥取県南部町祐生出会いの館 / (右奥)北野恒富《ポスター:清酒金露大塚醸》大正3~5年(1914~16)頃 凸版印刷株式会社 印刷博物館
  • 北野恒富《『廓の春秋』》大正3~7年(1914~18)頃
  • 第5章「素描」
  • (左から)生田花朝《四天王寺聖霊会図》昭和2年(1927)大阪城天守閣 / 木谷千種《をんごく》大正7年(1918)大阪新美術館建設準備室 [いずれも前期展示]

北野恒富は金沢生まれ。師の稲野年恒は月岡芳年の門人なので、芳年の孫弟子という事になります。

画業の初期は新聞小説の挿絵や美人画ポスターなどを手掛けていましたが、明治43年(1910)の文展で初入選。翌年は三等賞となり、日本画家としての地位を固めていきます。

明治末から大正初期は、洋風の写実表現も取り入れ、妖艶で退廃的な作風。「画壇の悪魔派」は京都の画家たちによる命名ですが、特異な画風をうまく表しています。

恒富中期の代表作といえるのが《淀君》。この時期は洋画風の表現から離れ、浮世絵などを積極的に学習しました。大阪城落城寸前の淀君が闇に浮かぶ、恐ろしい傑作です。

第1章「「画壇の悪魔派」と呼ばれて ─ 明治末から大正、写実と妖艶さと ─」、第2章「深化する内面表現 ─ 大正期の実験とこころの模索 ─」


画業を通じて実験的な創作を厭わなかった恒富ですが、大正末期から昭和になると、その傾向は顕著になります。大胆な構図、斬新な配色、さらにモダンな感覚も加わり、多彩な作品を残しています。

中でも目を引くのが、再興第16回院展で好評を得た《戯れ》。緑あふれる画面の左下に、カメラを手に取る日本髪の舞妓。着物の緻密な描写と白い肌が映える、抜群のデザイン感覚です。

第3章「大阪モダニズム「はんなり」への到達 ─ 昭和の画境、清澄にして艶やか ─」


前述したように、もともと小説の挿絵や美人画ポスターは恒富の原点。日本画家として活躍してからは挿絵と離れた時期もありましたが、後に復活。谷崎潤一郎と親しく交わり、挿絵を新聞に連載しています。

当時の最先端メディアといえるのが、広告ポスター。購買意欲を高めるポスターが求められたこの時代、恒富が描いた二重瞼で大きな目の女性像はピッタリとはまり、恒富の知名度は大きく広がりました。

第4章「グラフィックデザイナーとして ─ 一世を風靡した小説挿絵とポスターの世界 ─」


会場後半には素描も。スケッチブックには、完成作の元となった人物像のほか、古美術の学習から風景までさまざまなものが描かれており、画家の実像が透けて見えます。

大阪画壇のリーダー的な存在になった恒富は、画塾「白耀社」を設立。多くの門下生を世に送り出しました。恒富の意思を受け継いだ次代の画家たちによる作品も、それぞれの個性が光ります。

第5章「素描」、第6章「画塾「白耀社」の画家たち ─ 大阪らしさ、恒富の継承者たち ─」


展覧会は、あべのハルカス美術館、島根県立岩見美術館と巡回して、千葉市美術館が最終会場です。11月3日~11月26日の前期と、11月28日~12月17日の後期で多くの作品が展示替えされますので、ご注意ください。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年11月8日 ]

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会期

2017年11月3日(金)~2017年12月17日(日)