鏨の華 ―光村コレクションの刀装具―

驚異の手わざに脱帽

日本・東洋古美術の優品を所蔵している根津美術館。燕子花図をはじめ絵画は有名ですが、実は日本最大級の刀装具コレクションがある事は、あまり知られていないかもしれません。驚くべき金工の技が施された「掌上の小宇宙」を楽しめる展覧会が、根津美術館で開催中です。

  • 会場 手前は光村利藻の肖像写真
  • (上4点)《厩図揃金具(小柄・筓・縁頭)》山崎一賀作 江戸時代(18~19世紀) / (下4点)《獅子戯宝図三所物(小柄・筓・目貫)》後藤一乗作 江戸時代(19世紀)
  • 重要美術品《波鯉図鐔》土屋安親作 江戸時代(18世紀)
  • (上1点)《牡丹蝶図鐔》加納夏雄作 江戸〜明治時代(19世紀) / (下2点)《鍾馗鬼図大小鐔》松尾月山作 江戸〜明治時代(19世紀)
  • 《『鏨廼花』初版本》光村利藻著 明治36年(1903)
  • 重要文化財《聖衆来迎図大小揃金具》後藤一乗作 大:文政5年(1822)・文政8年(1825)
  • (2点)《釈尊・龍頭観音図大小鐔》伊藤勝見作 明治38年(1905)頃
  • 《刀 銘 明治乙巳秊一月元旦 為征露戦役旅順陥落記念/応龍獅堂主人需 月山貞一謹造之幷鐫》明治38年(1905)
  • 《枝菊蒔絵刀拵 附 菊花和歌彫銀刀》銀刀:池田隆雄作 金具:海野勝珉・川原林秀国作 明治38年(1905)頃[11/26まで展示]

明治の実業家で、光村印刷の創業者である光村利藻(みつむらとしも)が収集した刀装具を中心に紹介する本展。第1章では全体像のダイジェストです。

刀装具とは、日本刀の拵(こしらえ:刀身以外の外装)に付けられた鍔(つば)や小柄(こづか)などの金具の事です。甲冑などと同様、江戸時代には装飾的になりますが、なにぶん刀に付けるものなので、大きさは限定的。装剣金工たちは競うように、極小の世界を華麗に象りました。

中にはルーペが置かれている作品も。本展では単眼鏡レンタルもあります。表面が凸凹しているのは「赤銅魚々子地」で、小さな円の模様はひとつひとつ鏨(たがね)で打ち込んでつくります。

第1章「稀代の刀装具コレクション」


光村利藻の大きな功績が、刀装具の大型名品図録「鏨廼花」(たがねのはな)の出版。全国の所蔵先で作品を撮影するため、分解して持ち運べる撮影機材まで開発。装剣金工の略伝もまとめ、高く評価されました。

会場には「鏨廼花」に掲載されている写真と、実際の刀装具を並べた展示もあります。「鏨廼花」は刀装具研究の礎であり、同書に掲載されている刀装具は美術的にも高く評価されています。

光村は自邸で刀剣会も開催しています。残された写真を見ると、畳敷の大広間に刀剣や刀装具がずらり。かなりスケールが大きな刀剣会だった事もわかります。

第2章「出版と展示 ── 『鏨廼花』の編纂と多彩な文化活動」


光村コレクションの中には、自身が発注者となって刀剣・刀装具をつくらせたものもあります。幕末に活躍した装剣金工が高齢化し、技術の継承が難しくなる中、当時の名工に製作の機会を与えようとしたのです。

光村は京阪地区を拠点としていたため、当地の画家とも親しく交わりました。中でも竹内栖鳳には心酔、熱心に作品を収集しました。竹内栖鳳も支援者に応えるべく、刀身彫りの下絵を描いた事も。刀の切れ味を感じさせる鋭いススキの描写は見事です。

第3章「光村利藻とパトロネージ」


展覧会タイトルでもある「鏨」(たがね)は、金工で使う道具。鋼鉄製の小さな棒で、これを金属にあてて鎚(かなづち)で叩く事によって、細工を進めます。

現在ならCGと3Dプリンターで成形しそうですが、当たり前ですが当時は全て手づくり。あらためて驚異の手わざに脱帽です。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年11月2日 ]

"超越技巧"の源流 刀装具

内藤直子 (著)

淡交社
¥ 1,944


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ミュージアムの詳細

展覧会の詳細

会期

2017年11月3日(金)~12月17日(日)